踊りたい。踊らずにはいられない。
自分のダンスを誰かに喜んでもらいたい──。
そんな人間の本能は、映画にとっても最高のテーマとなり、『フラッシュダンス』、『リトル・ダンサー』など、これまでも多くの傑作を誕生させてきた。
このダンス映画の歴史に、またひとつ秀作が加わる。
しかもインドで生まれ育った主人公という“異例”の設定だ。
インドとダンスといえば、『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『RRR』といった人気映画の中のワンシーンを思い浮かべる人が多いはず。しかし本作に登場するマニーシュは、クラシックバレエ、コンテンポラリーダンスで才能を開花。その成長を追いかけるという意味で、ダンスの“王道”ドキュメンタリーである。
18歳の時にボリウッド映画のアクロバティックな動きに魅了され、自己流のトレーニングを積み、驚異的なテクニックと柔軟性を身につけていくマニーシュ。イスラエル系アメリカ人のダンス教師イェフダとの出会いによって、クラシックバレエの技術を短期間で習得した彼は「プロのダンサーとして世界で活躍したい」「僕をダンサーと呼んで(=コール・ミー・ダンサー)」と、人生をダンスに捧げる。そんなマニーシュの日々を誠実な目線で見つめ、予想を超えた感動をもたらすのが、この『コール・ミー・ダンサー』だ。
監督・プロデューサーを務めたレスリー・シャンパインは、自身も元バレエダンサーで、かつてイェフダのレッスンを受けた経験もある映像作家。彼との信頼関係が本作を誕生させたと言ってもいい。
「僕をダンサーと呼んで」。このマニーシュの願いは、どのように叶うのか。
人生の目標を定め、そこに向かってひたむきに努力する彼の姿は、今を生きるわれわれのひとつの指針となることだろう。

  • マニーシュ・チャウハン
    1993年12月28日生まれ、ムンバイ出身。
    大学生の時にボリウッド映画を観たことでダンスに興味を持ち、ブレイキンを独学で学び始める。「インディアンズ・ゴット・タレント」や「ダンス・インディア・ダンス」などの人気リアリティ番組に出演し注目を浴びたことをきっかけに、ムンバイのダンスワークス・スクールに通い始める。そこで、イスラエル系アメリカ人の師イェフダ・マオールと出会いバレエを学んだ。2020年、自身の半生を描いたNetflix映画「バレエ:未来への扉」で自身の役を演じた。現在、ニューヨークのペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーでダンサーとして活躍している。
  • イェフダ・マオール
    1943年9月4日生まれ。
    テルアビブのバットドール・ダンス・カンパニーでプリンシパル・ダンサーとしてキャリアをスタートさせる。引退後は、ルドルフ・ヌレエフやナタリア・マカロワをはじめとする世界中の偉大なダンサーたちを指導し、またサンフランシスコのダンサーズ・ステージとバレエ・マディソンでディレクターを務めた。現在も、インドでバレエ教師として活躍している。

  • 監督・プロデューサー:
    レスリー・シャンパイン
    ダンサーを引退後、映像業界に入る。
    エミー賞受賞作品を含む、ケネディ・センター名誉賞の受賞者たちの30本を超える伝記映画に8年間携わったほか、ドキュメンタリー、文化的及び教育的な番組まで幅広く手がける。主な作品にPBSの“One World: India”、“Avoiding Armageddon”、“Closer To Truth”、テリー賞、シネ・ゴールデン・イーグル賞、ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭でゴールド・レミ賞を受賞した“Who Betrayed Anne Frank”(ディスカバリー・チャンネル)、“DC Cupcakes”(TLC)、“Smithsonian Networks series’ Seriously Amazing Objects”(A&E)、エミー賞とケーブルACE賞にノミネートされた“Fireworks, with George Plimpton”(A&E)などがある。
  • 共同監督:
    ピップ・ギルモア
    25年以上にわたって、ドキュメンタリーに携わってきた経験豊かな監督であり、プロデューサーであり、作家として活躍している。ドキュメンタリー以外にもFox、ABC、CBSのテレビドラマも手がけており、ニューヨーク映画祭、ワールドフェスト・ヒューストン映画祭、テレビジョン・アワード、ビデオ協会賞、サザン短編映画祭、コーディ賞、ピア賞、インビジョン賞などを受賞し、最高の評価を獲得している。